剥いたら消えるたまねぎとしての生活

プロポーズ

ぬれた黒土食べたがるばらの庭に

貴女は埋められた後頭部を強く撲たれ 

花嫁衣装は朽ち果て切り花のブーケは香りを憂い顔にとざし

貴女を待つ百年の歳月は雨と雪かわるがわる訪れ

小指に結わえられた糸の約定

臙脂のベルベットの強靱さで食いこんで

新月の晩の逢瀬 で

探しだす貴女の埋もれた季節を

一世紀にわたる不条理

皮下脂肪にたくしこまれた 無数の歌

貴女を貴女の死骸を光のない光がすかすだろうそれは

おそらく月光だろう

夜半の墓地へ遣わした忠実なる墓守が 

貴女を迎えでるだろう年代物の墓石をどかし

ぬかづきかしづく手の甲へくちづける腐葉土の寝床

なぐさみものとしての老いた心臓を供するだろうそれは充ちゆく死の供物で

もうひとつは暗銀の誓約指環それは貴女への

百年めのまごころの愛となるだろう掛け値なしの献身として

靴下泥棒

靴下を靴下をください貴方のとっておきの靴下を

黙ってないで私にください

渡してください半日はき通した酸っぱくぬるぬるのその靴下を

さもなくばしなくてはならない泥棒を

人がはいている靴下をくすねるにはちょっとしたこつが要るんだ

いちばんのカモはぐでんぐでんに酩酊した会社員で

駅の構内や公園のベンチでつぶれているとこを

そっと忍び寄ってはズボンの裾をぺろんとめくり

すね毛のからんだふくらはぎをひとさすりして

くるんくるんとまるめてゆく靴下の輪っか

まるめた靴下を中華鍋の高温の油におとし

からっとあげれば靴下ドーナツのできあがり!

 

お腹をすかした女子高生やおばかなOLたちが

おじさんたちの足臭で味つけした靴下ドーナツを食べて

らいちのような味がするねい、などと噂しあって

SNSにセルフィを投稿して得意げな顔をして

噂が噂を呼んでグルメサイトでさあ大評判

私の店は大賑わいのてんてこまい

念願叶ってようやくお金持ちになれるんだから

 

だから靴下をだしなさい靴下を貴方の脱ぎたての靴下 

黙ってないで早く出しなさい女の子たちのおやつとしての靴下を

さもなくばしなくてはならない恐喝を

早く! さあみんなが食べたがるうちに早く!